西国三十三観音霊場巡りの旅 興福寺・南円堂(結縁御開帳)

興福寺・南円堂(結縁御開帳)

巡礼記

訪問日:平成20年11月21日

西国三十三ヶ所の札所本尊である南円堂の不空羂索観音像は毎年10月17日にご開帳されます。平成20年は「興福寺国宝特別公開」ということで、10月18日から11月24日まで南円堂内陣が引き続きご開帳され、加えて五重塔初層内陣も特別に公開されています。 既に興福寺を訪れている方から「すごく混んでおり、拝観するまでかなり時間がかかった」と聞いていましたので、すいているだろうと思われる平日に訪れることにしました。

近鉄奈良駅から徒歩で興福寺へ。今回はまっすぐ南円堂へ向かいました。最初はいつものようにお堂の前でお参りをしました。いつもと違うのは今回は御結縁の綱があったことです。そして、お堂の左側にある券売所で拝観券を購入しました。拝観料は1000円で、南円堂内陣、五重塔初層内陣、東金堂を拝観することができます。また国宝館を団体料金で拝観することもできます。

南円堂の中に入ると大きな不空羂索観音像が目に入りました。まずは向かって右側から拝観するような形になります。ゆっくり回りながら正面へ。真正面から見ても素晴らしい仏様です。不空羂索観音像を見ると手に羂索を持っているかつい確認してしまいますが、南円堂の不空羂索観音像はきちんと羂索を持っていました。更に回って向かって左側から拝観。この角度からも素晴らしいです。そして背後へ。光背に大きな丸い円があり、背中が見えるようになっていました。後ろから見ていると本当に頼もしい仏様だと思えます。 不空羂索観音像のみに目がいってしまいますが、周りの四天王像も素晴らしいです。特に広目天と多聞天像が印象に残りました。

南円堂から出ると一言観音堂でお参りをし、納経所で御朱印を頂きました。そして不動堂でお不動様にお参りをしました。次は「興福寺国宝特別公開」の目玉の一つである五重塔拝観へ。少し並んで待つと初層へ案内されました。

中に入るとまず釈迦三尊が祀られていました。そして、薬師三尊、弥勒三尊、阿弥陀三尊が祀られていました。案内の方によると、南に釈迦如来、東に薬師如来、北に弥勒如来、西に阿弥陀如来が祀られているのだそうです。

東金堂を拝観した後、国宝館の諸仏を拝観したくなり国宝館へ。やはり阿修羅像が一番人気で、阿修羅像の前にはたくさんの人が足を止めて見入っていました。阿修羅像以外では、私は大きな千手観音立像が好きです。きっと皆さん、阿修羅像以外のお気に入りの仏像があると思います。最後に今回特別に公開されている法相六祖像を拝観しました。解説によると、法相六祖像は元々南円堂に安置されているようです。また南円堂の解説で印象に残った箇所がありましたので下に記載します。
“南円堂は境内の西南の角にあり、それより先は崖になっていました。こうした地形から南円堂のある場所は平安時代には既に観音の地、補陀洛浄土とされていました。”

南円堂の不空羂索観音像は以前からずっと拝観したいと思っていましたが、今回、初めて拝観することができ、とても良かったです。

(追記)

興福寺を拝観した後、東大寺の三月堂を訪れました。三月堂も南円堂と同様に不空羂索観音像を安置しています。訪れた時、仏像好きと思われる方が友人に解説をしていました。その解説を私も何とはなしに聞いていたのですが、藤原氏と不空羂索観音像の関係の話はなるほどと思いました。以下、その話です。

よく知られているように藤原氏の氏神を祀った春日大社では鹿を神の使いとしています。つまり、藤原氏にとって鹿は聖なる生き物です。 一方、不空羂索観音像は鹿皮をまとっているのが特徴で鹿皮観音とも呼ばれています。 よって、鹿つながりで藤原氏は不空羂索観音を信仰し、南円堂に祀ったそうです。