西国三十三観音霊場巡りの旅 草創1300年記念 2018年巡礼

草創1300年記念 2018年巡礼

巡礼記録

清水寺

2018年の清水寺における特別拝観は、随求堂に祀られている秘仏・大随求菩薩坐像の御開帳です。大随求菩薩坐像は江戸時代の1728年に造られ、随求堂で拝観できるのは222年ぶりとのことです。

私は清水寺を訪れた時、随求堂の胎内巡りを何度かしており、大随求菩薩は好きな仏様なので、御開帳の話を聞いてから、是非、お堂で拝観したいと思っていました。ということで、春の御開帳期間である3月2日から3月18日に合わせて、3月3日に早速、清水寺を訪れました。

清水寺は京都随一の観光地ですので、訪れた時も沢山の人がいました。年々、外国の方が増えているような気がしますが、これは良いことだと思います。仁王門をくぐり、境内へ。少し歩くと、列がありました。「これは大随求菩薩像拝観の列に違いない」と思い、並ぶと、お寺の方が「こちらは御開帳の列です。拝観希望の方はお並び下さい」と案内がありました。

私が到着したのは午後12時ぐらいで、20分ぐらい並んだ後、受付まで来ました。入り口で拝観料100円を払い、堂内へ。堂内ではお寺の方が簡単な説明ををしており、

「大随求菩薩の『随』とは『したがう』という意味、『求』は『もとめる』という意味。つまり、求めたらならば、どんな願いも叶えてくれる仏様です。しかし、一願の仏様で、一つだけ願いを叶えてくれます。豊臣秀吉に天下を取らせた仏様です」

とのことです。

列が進み、右壇に祀られている千手観音像にお参り。そしていよいよ、大随求菩薩像へお参り。お寺の方の案内の通り、一つだけお願いしました。叶うと良いな。そして、左壇に祀られている十一面観音像にお参りしました。

次は胎内巡りです。胎内巡りでは、左の壁に設置された大きな数珠を頼りに暗闇の中、歩を進め、光に照らされた大随求菩薩の梵字が描かれている石を廻して、お願い事をします。現在は街中ではどこでも明かりがあり、何も見えない暗闇の中を歩くという、日常では体験できないことを体験できるので、私は胎内めぐり(戒壇めぐり)が好きです。

しかし、今回、胎内巡りをして、何も見えない暗闇というのは、明日がどうなるか分からない人生そのものを表しているのだと思いました。そして、数珠は仏様が示してくれる道標で、それに従って、一歩一歩正しい方向に進めば、何が起こるか分からない人生においても、間違いなく、仏様のようになれるのではないかと思いました。つまり、日常体験できないことではなく、日常体験していることなのだと感じました。観音霊場を巡礼している者として、少しでも観音様のような人になれるよう日々行動していきたいと改めて感じた巡礼でした。

随求堂と並んでいる参拝者

石山寺

西国三十三所第13番札所の石山寺と第14番札所の三井寺は共に滋賀県大津市にあります。今回、両寺が共催して、4月28日から5月20日まで「あお若葉(もみじ)の競演」と題し、期間限定の特別企画を行います。ということで、早速、5月1日に両寺を訪れました。

まずは石山寺です。受付で石山寺・三井寺共通入山券(1000円)を購入しました。両寺を訪れるつもりの方は入山料がそれぞれ100円引きとなる共通入山券を購入しましょう。

石山寺での特別企画は、初公開となる光堂(こうどう)における阿弥陀如来坐像、大日如来坐像、如意輪観音半跏像の公開です。本堂や多宝塔でお参りしつつ、青もみじを楽しみながら境内を歩いていくと、やがて、光堂に到着しました。

あお若葉の競演の案内

光堂

拝観料500円を払い、堂内へ入ると、堂内正面に向かって左から大日如来坐像、阿弥陀如来座像、如意輪観音坐像が祀られていました。大日如来像は「元多宝塔の本尊であったと伝わっている金剛界大日如来で、がっしりしたあごの張った密教像らしいお姿」の旨が書かれていました。たしかに独特のお顔をした像です。ちなみに多宝塔に祀られている快慶作大日如来像が展示会などに出展されてお寺にいない時は代わりにこちらの像が多宝塔に祀られます。

中央の阿弥陀如来像は「今は所在の分からないかっての光堂の本尊であったと伝わっている。往生者を極楽浄土に迎える来迎印を結ぶ」の旨が書かれていました。如意輪観音像は「本堂本尊の旧前立像。岩座上の蓮華座の上に座し左足を垂下している。淀殿の寄進により造られた」の旨が書かれており、この中で淀殿という言葉が心に残りました。

如意輪観音像は若く、威風堂々とした姿です。これは一般に菩薩像はお釈迦様の王子時代の姿をモデルにしているからかもしれませんが、私は豊臣秀頼がモデルなどではと感じました。淀殿は豊臣家の滅亡を予感しており、現世では豊臣家が亡くなっても、仏の世界では豊臣家が永遠に続くように秀頼をイメージした観音像を石山寺に寄進したのではないかと思いました。

光堂での参拝が終了した後も境内を散策し、青もみじを楽しみました。青もみじが映えた箇所は、下に画像で紹介する「多宝塔と硅灰石」と「補陀落山雅の台から見た本堂」です。「多宝塔と硅灰石」は有名ですが、「補陀落山雅の台から見た本堂」はあまり知られていないと思いますので、是非訪れて下さい。実物は画像より何倍も素敵な景色です。

あお若葉と多宝塔、硅灰石

あお若葉と本堂正面

三井寺

石山寺の次は三井寺です。京阪大津線に乗り、石山寺駅から大津市役所前駅まで移動しました。そこから少し歩くと三井寺の仁王門に到着。石山寺で購入した共通入山券を提示し、境内に入りました。三井寺での特別企画は、普段は入ることの出来ない国宝・金堂内陣の特別参拝です。内陣では、教学院本尊の大日如来坐像、北院の新羅明神の本地仏である文殊菩薩坐像、南院の三尾明神の本地仏である普賢菩薩坐像などが拝観できます。

三井寺でも青もみじを楽しみながら境内を歩いていくと、やがて、金堂に到着しました。靴を脱いで、堂内に上がると、内陣拝観の受付がありましたので、受付で拝観料500円を払い、内陣に入ると、お坊さんがおられ、塗香をやり方を説明してくれました。左手の手のひらを出し、そこに塗香を受け、右手の人差指でつまんで、まず額につけます。これにより、身(しん)を清めます。次に口につけます。これにより、口(く)を清めます。そして、胸につけ、意(い)を清めます。最後に両手を揉んで塗香を手のひら全体に広げ、そして、両手を胸につけ、何度か左右に引きます。身口意が清められて、初めて、仏様を拝観することができます。

先ずは三井寺曼荼羅図が祀られていました。今まであまり意識したことはなかったのですが、三井寺は弥勒仏を祀る金堂(中院)を中心に南北に広がっており、北院、中院、南院の三院に分かれています。

次は文殊堂本尊の文殊菩薩坐像と新羅明神画像です。文殊菩薩は北院の新羅明神の本地仏です。文殊菩薩像は悟ったようなお顔をされており、全てのものを優しく包み込んでくれるような印象を受けました。

次は閉じられた厨子があり、その中に秘仏の弥勒仏が祀られています。厨子は閉じられており、お姿を直接拝観することは出来ませんが、その力は厨子の中から伝わってくるようでした。

次は三尾明神画像と普賢菩薩坐像です。普賢菩薩は南院の三尾明神の本地仏です。そして最後に教学院本尊の大日如来坐像が祀られていました。

今回の特別公開で、三井寺には、中院の弥勒仏、北院の新羅明神(文殊菩薩)、南院の三尾明神(普賢菩薩)という重要な神仏が祀られていることを整理できたのが一番の収穫でした。観音霊場巡りなので、観音様にお参りするのが一番の目的ですが、観音様にお参りしたらすぐに次のお寺に向かうのでなく、お寺に祀られている他の神仏にもお参りし、御縁を広めることも大切だと思います。そのようなお参りを観音様も望んでいるのではないでしょうか。

金堂での参拝が終了した後も境内を散策し、青もみじを楽しみました。青もみじ単独では、微妙寺から毘沙門堂までの道が綺麗でしたが、私は青もみじ単独よりも建物と一緒に見る青もみじが好きなので、仁王門と青もみじの景色が一番良かったです。

金堂特別拝観の案内

あお若葉と仁王門