巡礼記
法華寺
訪問日:平成19年11月4日
10月25日から11月12日まで「佐保路の秘仏と寺宝展」ということで、佐保路の三観音寺(法華寺、海龍王寺、不退寺)において天平文化の建造物や優美な寺宝の数々が特別公開されていました。これに合わせて、それらのお寺を訪れました。
JR奈良駅からバスに乗り、バス停「法華寺前」で下車しました。バス停からは法華寺より海龍王寺の方が近いと思いますが、まずは法華寺からお参りすることにしました。バス停から少し歩くと法華寺の山門に到着しました。
秋の特別公開ということで、本堂・慈光殿・庭園が拝観できるようになっていました。訪れることができる場所によって入山料が異なり、私は本堂と慈光殿を拝観できる千円の共通券を購入しました。
境内に入るとまっすぐに本堂に向かいました。ふすまを開けて本堂に入るとやはりご本尊の観音様に最初に目がいきます。こちらのご本尊は良く知られているように光明皇后のお姿をうつして刻まれたと伝えられている女性的な観音像です。髪が肩まで掛かっており、光背も特徴的です。まずはご本尊の前に座ってお参りをしました。観光だとしてもお寺に来た場合は、まずはご本尊に手を合わせるべきだと思います。
次に堂内の仏像を拝観しました。堂内にはテープによる案内が流れており、非常に分かり易かったです。堂内右側には、大きな十一面観音菩薩像と文殊菩薩像、聖徳太子像、弘法大師像が祀られていました。左側には、横笛像、木造仏頭と二天頭が祀られていました。仏頭は非常に大きく、全体が残っていればかなり大きな仏像だったと思います。またテープでは維摩居士座像が祀られていると案内されていましたが、どこに祀られているのか最初は分かりませんでした。よく見渡すと入口付近にある売店の後ろに祀られていました。最後に売店におられたお寺の方にご朱印をお願いして、ご朱印を頂きました。
次に慈光殿に行きました。慈光殿には阿弥陀三尊画像が祀られていました。案内によると光明皇后ご臨終の枕仏と伝えられているそうです。また五重小塔があり、本堂修理際に古廃材となった天平、鎌倉時代のものを用いて作られたそうです。
また境内には、横笛堂や薬師堂がありました。法華寺は秋の観光シーズンでもそれほど混雑することなく拝観できるので、のんびり拝観したい方にはお薦めのお寺です。
本堂その1
本堂その2
海龍王寺
訪問日:平成19年11月4日
法華寺を出て元来た道をそのまま戻り、再び「法華寺前」のバス停に来ました。そして乗ってきたバスの進行方向に歩くとすぐに海龍王寺に着きました。山門をくぐり、築地塀に囲まれた参道を歩くと入山受付所があり、そこで入山料500円を払って境内に入りました。
本堂に上がると本尊の十一面観音像が祀られているのが目に入りました。まずはご本尊の前に座ってお参りをしました。そしてかなり近くまで寄れるようになっていたので近くでご本尊を拝観しました。ご本尊は鎌倉時代の作ですが、昭和28年まで秘仏になっていたので保存の状態がとても良好です。全身の金泥が制作当時のまま残っていると書いてありましたが、とても鎌倉時代とは思えないほど良く残っています。法華寺の観音様は女性的でしたが、海龍王寺の観音様は私的には男性的に見えました。
堂内には、不動明王像、愛染明王像が観音様の脇侍のような形で祀られていました。また文殊菩薩像、毘沙門天像、弘法大師筆の毘沙門天画像、同じく弘法大師筆の隅寺心経などが安置されていました。写経をするようになって隅寺心経という言葉をよく耳していたので、実物を拝観できて良かったです。その後、堂内にお寺の方がいらっしゃったのでご朱印をお願いしました。
ご朱印を頂いた後、お寺の方と少し話しました。文殊菩薩像は普通、獅子の上に座っているのに、こちらの文殊菩薩像は立っていたので変わっていると思ったのでそれを聞くと、元々は帝釈天像だったらしいのですが、真言律宗で文殊信仰が盛んになったので文殊菩薩として祀られるようになったそうです。獅子の像もあるらしいのですが展示はしていないそうです。また弘法大師筆の毘沙門天画像が海龍王寺にある理由を聞くと、弘法大師が唐から戻ってきて海龍王寺を訪れた時、平城京は既に廃墟のようになっていたそうです。廃墟には悪霊などが住み着くと考えられており、平城京の鬼門を守るために弘法大師が毘沙門天画像を海龍王寺に安置したそうです。
本堂を出た後、国宝である五重小塔が安置されている西金堂に行きました。小塔というように高さが4メートルほどしかありません。しかし細部にいたるまで塔として正確に作られており、国宝にふさわしいものでした。
今回この文章を書くためにインターネットで色々調べていると海龍王寺のご住職のブログを発見しました。そのブログに掲載されてあるご住職のプロフィールを見てびっくりしました。海龍王寺を訪れた時に話をしたお寺の方は、ご住職その人でした。ご住職自らが訪問者を迎え、気軽に話をしてくれる海龍王寺は良いお寺だと思います。(注:特別公開中は、ご住職が本堂に居られ、お参りの方々の応対をされていますが、普段は受付に居られ、お参りの方々の応対をなされています。)
山門
本堂
五重小塔
不退寺
訪問日:平成19年11月4日
法華寺と海龍王寺は地理的に近いですが、不退寺は少し離れています。海龍王寺から歩いて不退寺に行きました。山門をくぐるとすぐに入山受付所があり、入山料500円を払いました。そして境内に入り、本堂に上がりました。
本堂には観光客の方が数人おり、ある人が案内のお寺の方に熱心に質問をしていました。その質問の中で印象に残ったのは、本堂内が朱色に塗られていますが、これは神仏分離令の時に不退寺が神社になりそうになった名残だそうです。また五大明王が祀られていたのですが、これは日本で五番目に古い五大明王像だそうです。ちなみに一番古いのは東寺にある像だそうです。祀られている仏像の中で、本尊の聖観音像と地蔵菩薩像が弘仁時代のもので、五大明王像は藤原時代のものだそうです。
ご本尊の聖観音像は佐保路三観音の中で一番大きく、高さが190cmもあります。解説によると在原業平が自作したといわれているそうで、業平の理想の女性でないかとも言われているそうです。確かに女性的に見えますが、私的には男性的にも見えました。法華寺の観音様が女性的、海龍王寺の観音様が男性的、不退寺の観音様が中性的だと感じました。
不退寺も仏像を近くで拝観できるので近くによって拝観していると、小さな角大師も祀られていました。本堂を出た後、寺務所に行き、ご朱印を頂きました。
今回、佐保路の三観音の寺院はどこも良い観音寺院でした。観音様も素晴らしいですが、お寺の方と気軽に話ができる点も良いと思います。ところで、なぜ奈良県に観音霊場がないのかと思います。奈良県(大和地方)には素晴らしい観音寺院が多くあるので、佐保路の三観音寺院が中心となって是非、大和三十三観音霊場を設立して欲しいと願います。
山門
本堂
リンク集
法華寺ホームページ | 法華寺公式ホームページ |
---|---|
海龍王寺公式ホームページ | |
不退寺ホームページ | 不退寺公式ホームページ |