青岸渡寺(結縁御開帳)
巡礼記
青岸渡寺の巡礼記を書くのは難しいです。青岸渡寺だけを取り出して書いても、熊野の良さを伝えることはできませんので、今回は青岸渡寺のみを書くのではなく、青岸渡寺御開帳を目的として訪れた熊野巡礼記を書こうと思います。
訪問日:平成21年3月20日
新幹線で名古屋駅へ。そこから特急・南紀に乗り換えて、熊野を目指します。今回は、JR東海の便利なきっぷ「南紀・熊野古道フリーきっぷ」を使いました。
JR新宮駅で下車すると観光協会で神倉神社までの道を尋ね、地図を頂きました。今回で熊野を訪れるのは三回目ですが、まだ神倉神社を訪れたことがありませんでした。
- 一回目は熊野古道歩きと西国巡礼がメインの為、訪れる予定はなかった
- 二回目は訪れるつもりでしたが、時間がなく石段の目の前まで行って帰った
でしたので、今回は何はともあれ最初に神倉神社を訪れました。
地図を参考にして、駅から十分ほど歩くと前回訪れた時に見た赤い橋の景色が見えました。橋を渡り、境内に入ると気が違うというか空気が変わったのを感じました。手水舎で手を洗い、鳥居の前に自由に使える杖が置いてありましたので、杖を持ち、鳥居をくぐって、石段538段を登ります。石段は最初がきついです。現在のような整えられた石段ではなく、鎌倉積みの急勾配な石段です。しかし、そこを登り切ると比較的楽になり、しばらく登ると赤い鳥居が見えました。鳥居をくぐるとすぐにゴトビキ岩が見えました。やっと、ゴトビキ岩と対面することができました。早速、お参りです。今回無事にお参りできたことに感謝のお参りです。山上から見る景色も良かったです。桜も咲き始めで、もう少ししたら、更に綺麗になると思います。そして、石段を下りましたが、上りより下りの方が大変です。前回訪れた時にガイドの方がお祭りではこの石段を三段飛ばしで下ってくると言っていましたが、本当だったら凄すぎます。
石段を下りきり、境内にある猿田彦神社と神倉三宝荒神社でお参りをした後、境内の良い気の源が分かりました。猿田彦神社と神倉三宝荒神社の右横に水が流れているのですが、そこから良い気が出ています。神倉神社ではゴトビキ岩がパワースポットなのでしょうが、猿田彦神社と神倉三宝荒神社の右横に水が流れている場所も私的にはパワースポットだと感じました。今回、念願の神倉神社に訪れることができました。これから熊野を訪れる時には、必ず訪れようと思います。
ゴトビキ岩
神倉神社を訪れた後、新宮駅に戻って、阿須賀神社を目指しました。阿須賀神社もまだ一度も訪れたことのない神社でした。観光協会で頂いた地図を頼りに訪れると、熊野速玉大社と同じように町中にある神社でした。お参りをした後、案内板を読むと、東京の飛鳥山は阿須賀神社のご神体を勧請したものだそうです。
阿須賀王子の碑と案内があったのでそれを見ていると、新宮市立歴史民俗資料館の方が「今の期間、入場料が無料だから、寄っていきませんか」と声をかけてくれましたので、資料館に入りました。展示は「熊野詣盛時の神仏造形美」でした。
日本では鏡を神聖なものとして取り扱う伝統が弥生時代から形成されてきました。平安時代に仏が神の姿を借りて俗世に現れる本地垂迹説が唱えられると、神聖な鏡に仏の姿を表現した鏡像が生み出されました。鏡像をもとにして、鏡板と呼ぶ円形銅板に半肉彫りの仏像を取り付けたものが懸仏です。鏡像と懸仏を合わせて、御正体(みしょうたい)と言います。
展示では阿須賀神社に奉納された鏡像が展示されていました。阿弥陀如来、千手観音、薬師如来の熊野三山の本地仏の鏡像も展示されていましたが、大威徳明王の鏡像が特に多かったです。最初、その理由が分かりませんでしたが、案内によると阿須賀神社の本地仏は大威徳明王なのだそうです。
私が訪れた時も阿須賀神社には私以外一人しかおらず、あまり観光客が訪れる場所ではないのではないかも知れませんが、熊野の神仏に関心のある方は訪れたい場所です。
阿須賀神社
速玉大社
阿須賀神社でお参りした後、徒歩で速玉大社へ。速玉大社でお参りした後、補陀洛山寺に行くことにしました。補陀洛山寺は前回訪れた時に特別に御本尊を拝観させて頂き、優しいお顔をされた観音様にお会いできたお寺です。
紀伊勝浦駅行きのバスに乗り、那智駅前で下車しました。補陀洛山寺は那智駅からすぐの場所にあります。まずは隣接する熊野三所大神社でお参りをしました。三所大神社の名前の通り、熊野三山の神様が祀られています。そして、補陀洛山寺へ。
お堂に着き、本堂に上がると丁度、御本尊を開帳しているところでした。御朱印を頂く時に知ったのですが、青岸渡寺の御開帳期間は観光協会を通して予約をすると御開帳してくれるそうです。今回も御本尊の観音様を拝観でき、とても嬉しかったです。
開帳が終了して人が少なくなると、般若心経を唱えました。御本尊の左右には、毘沙門天と広目天が祀られていました。毘沙門天の向かって右側には、不動三尊像、不動明王立像、千手観音像が祀られていました。千手観音像はお前立ちとして造られた仏像だと思います。ご本尊の特徴を継承しています。
本堂を出て、補陀洛渡海の船の模型を拝観した後、裏山にある補陀洛渡海された上人の墓、平維盛の供養塔を訪れました。補陀洛渡海上人の墓を目にすると、自然に手を合わせます。
最後に那智駅の裏側にある海水浴場に行きました。この日は晴天でしたので、空の青と海の青がとても綺麗でした。どこまでも青い空と海を見ていると、この先の南方に観音様がいらっしゃる補蛇洛山があるように思えてきました。でも、本当に補蛇洛山があると言えるのは、それぞれの心の中だと思います。一人ひとりが心の中に仏様のいる浄土を造ることができたならば、この世界が浄土になることでしょう。
補陀落山寺
青い空と海
訪問日:平成21年3月21日 午前中に熊野本宮大社を訪れました。行き帰りのバスから見る熊野川の景色は本当に綺麗です。私はエメラルドグリーンの川の色が特に好きです。また本宮大社も心落ち着く場所です。大斎原(おおゆのはら)に向かう途中に菜の花畑があったのですが、そこで今年初めてモンシロチョウを見ました。春の訪れをまた一つ実感しました。
バスで新宮駅周辺に戻ると、昨日と同じように紀伊勝浦駅行きのバスに乗りました。青岸渡寺に行くには神社お寺前駐車場行きバスに乗りますが、そのバスは紀伊勝浦駅から出ています。しかし那智駅にも立ち寄りますので、途中の那智駅で下車しました。 新宮駅から紀伊勝浦駅へ行くバスが止まるバス停と紀伊勝浦駅から神社お寺前駐車場へ行くバスが止まるバス停は少し離れていますので、神社お寺前駐車場行きバスが止まるバス停まで歩き、時刻表を見ると、次のバスはなんと40分後でした。
まだ昼食を取っていなかったので、昼食を食べられる場所を探しましたがありません。次は昨日訪れて印象が良かった海岸に行きました。しかし、昨日と違い、空が綺麗な青ではなく、また風も強かったので、早々と海岸から撤退しました。次は補陀洛山寺を訪れることにしました。熊野三所大神社でお参りした後、補陀洛山寺の本堂に行くとお堂の前にはたくさんの靴がありました。「団体の方がいるということは御開帳をしているかも」と思い、お堂に上がると御開帳をしていました。
今回で補陀洛山寺を訪れるのは三度目ですが、いずれの時も秘仏の観音様を拝観することができました。とてもご縁を感じます。またお寺の方も昨日の方と違う方で、昨年の8月に訪れた時に話をしてくれた方でした。本日も団体客相手に熱心にお話をされており、本当に御本尊の千手観音像が好きなんだなと感じました。
那智駅から神社お寺前駐車場行きバスに乗り、バス停「滝前」で下車しました。滝前とはもちろん那智の滝のことです。大きな滝ですので遠くからもよく見えますが、拝観料(300円)を払って、近くで拝観して欲しいです。
大斎原
那智の滝
那智の滝から歩いて、青岸渡寺を目指します。三重塔の内部を拝観できるようになっており、まだ内部を拝観したことがなかったので、拝観しました(拝観料200円)。中にはエレベーターがあり、まずは三階に上がります。三階には、那智の滝(飛滝権現)の本地仏である千手観音像が祀られていました。三階の外縁からは那智の滝が綺麗に見え、写真を撮るために一ヶ所だけ、金網に穴が空いていました。
階段で二階に下りると、阿弥陀如来像が安置されていました。こちらの阿弥陀様は尼子十勇士の一人である山中鹿之助の持仏堂の本尊だったそうです。そして、一階に下りてくると不動明王像が安置されていました。こちらのお不動さんは飛滝権現の不動堂に祀られていたそうです。
そして、いよいよ青岸渡寺の本堂へ。本堂に入ると人で一杯という訳ではありませんが、それなりに混雑しています。結願綱を握り、観音様にお参りをしました。青岸渡寺の観音様は本体だけで3メートル、台座と光背を入れると4メートルある大きな像だそうで、顔の部分しか、よく分かりませんでした。如意輪観音の特徴である顔に手を当てているのは、なんとか分かりました。同じような大きな如意輪観音様を祀っている石山寺のように目の前で拝観できれば良かったのですが。
三重塔
青岸渡寺の本堂
そして、熊野那智大社に行きました。宝物殿で那智山熊野権現参詣宮曼荼羅を拝観していると、係の方が色々説明して下さり、有意義な時間を過ごすことができました。