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北条氏邦が奉納した法養寺薬師堂 十二神将像

北条氏邦展

2024年4月20日、埼玉県立歴史と民俗の博物館で開催中の特別展「鉢形城主 北条氏邦」を鑑賞しました。本ブログは寺社めぐり関連のことを書いているので、関係のない展示のように思われるかもしれませんが、本特別展には北条氏邦とその家臣団が奉納した日光菩薩立像、月光菩薩立像、十二神将立像が展示されており、仏像好きの方も必見の展示なのです(しかも写真撮影可です)。

鎌倉仏教文化圏の十二神将像の特徴

中世の鎌倉には後世に強い影響を及ぼした十二神将像がありました。
それは
・永福寺薬師堂
・大倉薬師堂
に祀られていた十二神将像で、いずれも運慶が造ったと考えられています。残念ながらどちらの像も現存していませんが、影響を受けたと考えられる像は残っています。

永福寺薬師堂

永福寺薬師堂の像の影響を受けたと考えられる現存像は横須賀曹源寺の十二神将像であり、注目すべきは巳神です。十二体の中で巳神が最も良いお顔をされており、何か意味があるだろうと考えられ、巳に関係する同時代の重要人物を調べていると、源実朝が巳の刻に生まれたことが分かりました。つまり、巳神は源実朝ゆかりの像ということになります。
関東地方で十二神将像を見た時、巳神がイケメンだったならば、それは永福寺薬師堂像の影響を受けていると考えられます。

大倉薬師堂

大倉薬師堂の像の影響を受けたと考えられる現存像は覚園寺の十二神将像及び鎌倉国宝館で管理している辻薬師堂の十二神将像であり、注目すべきは戌神です。十二神将像は一般に炎髪(髪の毛が逆立っている)か甲をかぶっていますが、大倉薬師堂の像の影響を受けた戌神は髪型が巻き毛になっているのが特徴です。
大倉薬師堂は北条義時が建立し、義時には白い犬のお陰で源実朝の暗殺に巻き込まれずに済んだという逸話があり、この時の白い犬は十二神将像の戌神が姿を変えたものと言われています。ですので、戌神は十二神将像の中でも特別な存在ということになります。
関東地方で十二神将像を見た時、戌神が巻き毛だったならば、それは大倉薬師堂像の影響を受けていると考えられます。

法養寺薬師堂

巳神

巳神の特徴は良いお顔(イケメン)であるということなので、どうしても主観が入ってしまいます。巳神像を見た時、これは永福寺薬師堂の像の影響を受けていると考えてよいと思いました。左手を曲げて拳を腰近くに置き、右手を垂らしているその立ち姿は曹源寺の像とかなり近いと感じます。顔も十二体の中では間違いなく上位に入るイケメンです。

法養寺薬師堂 巳神

法養寺薬師堂 巳神(全体)

法養寺薬師堂 巳神

法養寺薬師堂 巳神(顔のアップ)

戌神

戌神の特徴は巻き毛ということでこちらは簡単に見分けることができます。戌神を見ると髪が巻き毛になっており、これには思わず声を上げてしまうぐらい感動しました。はっきり言って、像を美術品として見た場合は決して良いとは言えないと思いますが、巻き毛になっているということだけで、素晴らしい仏像に感じられました。

法養寺薬師堂 戌神

法養寺薬師堂 戌神(全体)

法養寺薬師堂 戌神

法養寺薬師堂 戌神(顔のアップ)

最後に

関東地方に現存する十二神将像の巳神と戌神の全てが上述した特徴を持っているわけではありません。北条氏邦が奉納した十二神将像の巳神と戌神に特徴があるのは、北条氏邦(小田原北条氏)が仏像の作成にあたって、鎌倉でも名作と言われる像をモデルにできるほどの力があったからだと思います。

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