神奈川県立歴史博物館では10月10日から11月29日まで特別展「相模川流域のみほとけ」を開催しています。神奈川県に住むものとしては見逃せない展示であり、終了間際ではありますが、11月26日に訪れることが出来ました。以下、展示を見た感想となります。
相模川流域のみほとけ
あいさつの文言の中に
おりしも本年は、新型コロナウィルスという未知の感染症に見舞われました。古来、それらは疫病と呼ばれ人々に恐れられてきました。疫病が流行するたびに、人々は貴賤を問わず、仏像に祈りをささげ、ほとけに救いを求めました。本展がそのような状況下の癒やしのひとときとなることを願ってやみません。
とあり、本当にそのとおりだなと思いました。
奈良・平安時代の仏像
24 千手観音菩薩立像
海老名市龍峰寺の清水寺式千手観音菩薩立像で、お寺で数回拝観したことがあります。お顔を見ると、厳しい表情をしているように感じました。新型コロナウィルスの現状を考え、厳しいお顔をしているのかなと思いました。
29 阿弥陀如来坐像
相模原市顕鏡寺の像で、「黒い」が第一印象です。また横から見ると薄いのも特徴です。弥陀定印をしていますが、通常は左右の人差し指がピッタリくっついていますが、本像は第一関節から上が開いています。このような像は修験道と関わりがあると聞いたことがありますが、図録を読んでも確認できませんでした。
表情は一心不乱に瞑想しているように感じられ、新型コロナウィルスから人々を救う法を考えているように思いました。
25 大日如来坐像
寒川町安楽寺の像です。近年に表面の漆地や面部が修理されているそうですが、良い像だと感じました。大日如来は金色が似合うと思います。
28 聖観音菩薩立像
相模原市普門寺の秘仏本尊です。解説に「プロポーションが整っており」とあり、確かにその通りだなと思いました。像を拝観し、彫りが浅いなと感じ、以前金沢文庫の講座で聞いた話を思い出し、この像は神像ではないかと思いました。図録を読むと普門寺は三島社の別当寺で、少しぐらいはその可能性があるかもしれません。
31 阿弥陀如来立像
藤沢市普門寺の像です。顔のパーツがそれぞれ中心近くにあるのが特徴です。図録で写真を改めて見ると、漫画に出てくる少年のように感じました。
27 十一面観音菩薩立像
藤沢市法照寺の秘仏です。錫杖を持つ長谷寺式観音像であり、左の頬の金箔が剥がれ、漆地が見えています。今まで沢山の人々を救うために活動したので剥がれたように感じられ、有り難さが一層増しました。
鎌倉時代の仏像
44 薬師如来立像
平塚市宝積院薬師堂の秘仏本尊です。お顔を拝観すると、笑っているようにも、困った顔をしてるようにも、悩んでいるようにも感じました。でも最後には、新型コロナウィルスにより、心を痛めているように感じました。
拝観した時は気づきませんでしたが、後で図録を読むと、本像は左手の薬壺胸前に掲げ、右手をそれに添えるような形をしています。このような像は最澄が太宰府竈門山寺で造った七仏薬師の中の善名称吉祥王如来と形が一致するそうです。このような事実を知らず、為になりました。
43 十一面観音立像
藤沢市慈眼寺の秘仏本尊です。像高が178.5センチある大きな像です。お顔を見ると優しさを感じ、体部を見ると頼もしさを感じました。図録では注目の仏像になっていませんが、個人的には非常に良い仏像に感じました。
45 巳神立像
平塚市宝積院薬師堂の像です。鎌倉の十二神将像は戌神と巳神に特徴がある2パターンがあり、巳神に特徴があるのは永福寺に祀られていた運慶作十二神将像で、本像はその系統に属します。私は鎌倉地方の十二神将像にはとても興味があるので、本像を拝観でき、良かったです。
34 薬師如来坐像
藤沢市養命寺の秘仏本尊です。寅年の御開帳時にお寺で拝観しましたし、鎌倉国宝館でも何度か拝観したことがありますが、当日お顔を拝観した時、安らぎを感じました。薬師如来が「心配しなくていいよ」と言っているように感じました。
41 聖観音立像
相模原市井原寺の秘仏本尊です。左頬の金箔が剥がれており、それが傷のように見えました。未敷蓮華を開こうとするその姿から衆生に悟りを開かせるためにそのような傷が出来たように思え、有り難さを感じる仏像でした。本像はしゃがんで見上げたほうが素晴らしく感じました。
40 阿弥陀如来立像
平塚市善福寺の像です。歯吹き阿弥陀ということで、ついつい目が口元にいきますが、顔の左側が金箔が剥がれ、赤くなっており、それが血のように感じられ、血が流れても衆生を救うのを止めないという意志の強さを感じました。
42 聖観音菩薩立像
相模原市正覚寺の秘仏本尊です。玉眼の目が印象的で、その目で全てのことを見通せるように感じました。
高僧たちの肖像
47 中峰明本坐像
甲州市栖雲寺の像です。とても優しいお顔をされており、中峰明本は来日することはなかったそうですが、弟子がこのような像を造るということは、弟子から慕われていたのだなと感じました。
49 韋航道然坐像
厚木市建徳寺の像です。こちらは厳しい表情をしているように感じ、弟子が気を引き締めたい時に本像を拝みに来たのかなと思いました。
50 夢窓疎石坐像
鎌倉市瑞泉寺の像です。ひと目見て、私のイメージする夢窓疎石とピッタリ一致するので、お寺を確認するとやはり鎌倉のお寺でした。
南北朝・室町時代の仏像
56 賓頭盧尊者坐像
愛川町菅神社の像です。説明に「内ぐりの墨書名に足利尊氏、高師直らの名前がみえ」とあり、凄いなと思いました。像は傷んでしますが、それはお賓頭盧像としての役目をしっかり果たしているからなので、悪いようには思えませんでした。
54 地蔵菩薩立像
厚木市建徳寺の像です。鎌倉地方の臨済宗のお寺は地蔵菩薩を祀っていることが多いそうです。それは建長寺の御本尊が地蔵菩薩、足利尊氏が地蔵信仰だったからだそうです。本像は南北朝時代の作だが鎌倉時代のものと比較しても遜色がないとあり、その通りだと思いました。
61 観音三十三応現身立像
平塚市光明寺の像です。展示では11体のみの展示ですが、実際には33体実在しており、33体全てあるのが貴重なのだそうです。怒ったような顔、優しい顔、まじめな顔など様々で、観音様が色々なものに姿を変えることを実感できました。
64 摩利支天騎猪像
相模原市安養寺の像です。本像は本展示会を紹介するウェブニュースでその姿を見ており、もし知らずにその姿を見たならば、とても感動したと思います。摩利支天像は中々拝観できるものではないですし、戦国時代好きの私としては武士に信仰された摩利支天には特別なものを感じます。
63 十一面観音坐像
平塚市神田寺の秘仏本尊です。十一面観音の坐像は珍しいなと思いました。展示ですと上から見下ろす形になるのですが、座って見上げたい仏様だなと感じました。
60 阿弥陀如来、薬師如来、千手観音菩薩立像
相模原市祥泉寺の像です。阿弥陀如来、薬師如来、千手観音菩薩と書かれているのを見て、直ぐに熊野の本地仏だと思い出しました。三体とも素朴な顔をしており、良い感じでした。
最後に
訪れて良かったと思える、素晴らしい展示でした。会期が後少しですが、まだ訪れていない方には強くお薦めできる展示会です。
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