東京国立博物館では2019年6月18日から9月23日まで、本館11室で特別企画 「奈良大和四寺のみほとけ」を開催しています。四寺とは、岡寺、室生寺、長谷寺、安倍文殊院のことで、それらのお寺から素晴らしい仏像が展示され、特に室生寺の十一面観音立像が楽しみでしたので、6月22日に早速訪問しました。以下、仏像を拝観した感想です。
奈良大和四寺のみほとけ
12. 長谷寺 十一面観音菩薩立像
11室に入ってすぐの目の前の場所に展示されており、長谷寺の十一面観音像ということで、右手に錫杖を持つ長谷寺式の観音像でした。像のお顔は子供っぽく感じ、特に正面から拝観した時に強くそのように感じられました。
10. 長谷寺 十一面観音立像
こちらも同じく、長谷寺式観音像ですが、先程の観音像とは受ける印象が違います。長谷寺式観音像は右手を垂らして錫杖を持つのが一般的ですが、こちらの像は肘を90度に曲げて錫杖を持っています。それが原因かは分かりませんが、錫杖がすごくアピールしているように感じました。
11. 長谷寺 阿弥陀如来立像
第一印象は、良いお顔をしているなと感じました。像の周りを回りながら拝観していると、会場のライトにより、顔に残る金箔がうっすら光り、それが涙の跡や汗をかいているように感じ、より一層、像が素晴らしく感じられました。本像を鑑賞する時は是非、像の周りを移動して、お顔の変化に注目してください。
2. 岡寺 菩薩半跏像
半跏思惟像ですので、右足を左足の上に置き、右手を頬に当て、何かを考えているようなお姿をしています。東京に来て、たくさんの人々にそのお姿を見られていますが、そのようなことを全く気にせず、どのように衆生を救おうか考えているようでした。
4. 岡寺 釈迦涅槃像
涅槃像ですので、体の右側を下にして、横たわったお姿です。正面から拝観している時は涅槃像だなぐらいしか感じませんでしたが、足元の方に回って、その姿を見ると、自身が涅槃図の中にいるように感じました。
涅槃図には、足を触るお婆さんの姿が描かれています。そのお婆さんに関する話を以前、ブログに書きました(涅槃図においてお釈迦様の足に手をかけて泣いているお婆さんの話)。
私はこの話が好きで、涅槃図を見るたびにお婆さんを見ては話を思い出しています。今回、像の足元を見て、お婆さんが足を触っている姿をイメージし、また、自身が足を触っていることもイメージすると、自身が涅槃図の中にいるように感じました。
8. 岡寺 義淵僧正坐像
展示案内には「重量感のある体つきと深い皺(しわ)は、長年修行を重ねてきた高僧の精神性を表しているかのようである」とありましたが、正直、正面から見たお顔は少しやりすぎのように感じました。しかし、横から見たお顔は良く、長年修行を重ねてきた高僧の精神性を表していると感じました。
5. 室生寺 釈迦如来坐像
若く感じる像で、また少し微笑んでいるように思えました。ですので、お釈迦様が悟りを開いた少し後ぐらいの時に弟子の様子を見て、微笑んでいる姿を表現しているのかなと思いました。
6. 室生寺 十一面観音立像、7. 室生寺 地蔵菩薩立像
本展示のメインの展示であり、11室を本堂と見立てると、本尊が祀られる位置に展示されています。両像とも堂々としたお姿で、真っ直ぐ正面を見て立つそのお姿は何かの儀式にのぞむ王族のように感じました。
やはり、室生寺の十一面観音像は素晴らしいです。室生寺は遠いので、今回、東京でお会いでき、本当に良かったです。
13. 長谷寺 難陀龍王立像
展示案内に「本像は『王』と書いた冠や衣服が中国の役人姿である点が珍しい」とあり、確かに冠に「王」の文字がありました。
口を開けているので、何かを喋っているように感じ、さきほどの十一面観音と地蔵菩薩が何かの儀式にのぞむ姿に感じたので、儀式の開始を宣言しているのかなと思いました。
14. 長谷寺 赤精童子(雨宝童子)立像
雨宝童子が天照大神と同体とされるという事実がありますが、それに関わらず、王子の風格を感じる像でした。
9. 長谷寺 地蔵菩薩立像
展示案内に「本像は長谷寺の僧に変身して学生を誘って長谷寺に入門させ、論議の席で問答したと伝えられ、論議地蔵と呼ばれる」とあり、面白い逸話だなと思いました。像は右手を垂らして衣をさわっており、それは議論する時の癖を表しているとも言えるなと思いました。
最後に
展示会場は外国からの方も多く、仏を敬う気持ちに国境は無いのだなと感じました。展示期間が約3ヶ月と比較的長く、特別展料金ではなく、一般料金で鑑賞できますので、是非、機会を見つけて、訪れましょう。
3年前に奈良の明日香と桜井、室生の四寺などを訪ねましたが、大和長谷寺では牡丹が見頃で室生寺では石楠花が見頃でした。
長谷寺では特別拝観でご本尊の巨大な十一面観音立像のおみ足に触れて至近距離から下半身のお姿を拝しました。でもお寺では雨宝童子像と難陀龍王像はやや距離を置いてお姿を拝するので、博物館では近くから観覧できるのがいいですね。公開中の宝物館では仏様のほか、毛細管現象で下に入れた油が上がって上のネズミの形の部分辺りに火が付く行灯が印象に残った覚えがあります。
室生寺は優れた古仏のお姿を拝めるだけでなく、美しく趣のあるお堂と塔のある境内の景色が素晴らしく、気に入ったお寺です。十一面観音立像と地蔵菩薩立像も素晴らしい仏様だと思いますが、弥勒堂の釈迦如来坐像は好きな仏様のおひとりです。でもその釈迦如来さまのお姿からは三代目若乃花だった花田虎上さんを何となく連想しますね。
大ドラさん、コメントありがとうございます。
長谷寺は何度か訪れていますが、牡丹の時期には訪れたことがないので、訪れたいと思っています。御本尊の十一面観音像の足を触れる特別拝観は印象深いもので、今もその時の記憶がはっきり残っています。雨宝童子、難陀竜王像を近くから拝観できるのは今回の展示の良い点ですね。それぞれの像の良さが強く感じられました。
室生寺の仏像は十一面観音像が有名ですが、全ての像が素晴らしいですね。ですので、室生寺を訪れた時はついつい滞在時間が長くなってしまいます。