月刊致知7月号に掲載されている関西シェフ同友会会長である小西忠禮さんとリンゴ農家である木村秋則さんの対談「いまをどう生きるのか」より。
小西さんの「自分を戒める十の原理・原則」
- 人生に近道はない
- たぐり寄せる行動を取る
- どんな時も前を向く行動力を持つ
- 全力で取り組む
- 何をやるにも舞台は世界だ
- 凡事徹底
- とことん考えて天地自然の理に従う
- 本物を見続ける
- 損得でなく、常に善意で生きる
- 必ず世のため、人のために生きる
人生に近道はない
(木村)こうして自分の歩いてきた道を振り返りながら、小西さんの「自分を戒める十の原理・原則」を見てみると、私の考えてきたこととすごくよく似ているんですよ。一番最初の「人生に近道はない」というのもそうです。
苦しい時の神頼みってありますね。りんごがなかなか実らなくて苦しんでいた頃に、仏教の本を読んでいたら千日の供養というのが書かれてあったんですよ。千日お参りを続けたら願いが叶うっていうんだけれども、そんなに待っていられないと。じゃあたくさんお参りしたら、その分早く叶うんじゃないかなと考えて、一日五回、多い時は十回もお参りして、これで短縮されたと思ったんだけれども、全然だめ。結局実るまでには八年から十年かかりました。やっぱり、近道はするべきもんじゃない。まさにそのとおりだよなと。一つのものを得るのに、一年、二年で答えは出てこないですよ。やっぱり六年、七年はかかっています。
(小西)学びというのはそういうふうに、日々コツコツと小さいことを積み重ねることによって、得ることができるのではないかと思います。学びなくして成功はないし、目先の成功ばかり考えるから学びが疎かになる。みんな棚から牡丹餅を求めがちだけれども、そんなものは一切ありませんよね。
西洋では八というのは完全数で、八年経つと一つのものが成就するといいます。人間はそれが見えないし、弱いから、途中で我慢できなくなって諦めてしまいがちだけれども、何事も八年は我慢しなければ成すことはできないと、自分の経験に照らして思うんです。
だから、すぐに結果を求めてはいけない。思いがけない転機がいつ訪れても対応できるように、日頃からしっかり自分を磨いておかなければいかんよと、私は若い人によく言うんです。怠らずに自分磨きを続けておれば、りんごの木に益虫が集まってくるように、必要とされて仕事のほうからやってくる。自分磨きをしておれば、自然に黄金の花が咲くんです。
(木村)大切なことは、小さな積み重ねだと思うんです。例えば、積み木でも、早くよい結果を出そうと思って縦に積むと崩れやすい。けれども、横に積むと崩れにくいわけですよ。私の場合も、小さな積み重ねがよい結果をもたらしてくれたんじゃないかと思っています。本当に地道な、やってきたことの積み重ねによって、人生の花は咲くんじゃないでしょうか。
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