月刊致知6月号に掲載されている、うなぎ屋「野田岩」五代目・金本兼次郎さんの「人生生涯うなぎ職人」より。
いま店で一番若い職人は十八かそこらですけど、一人前になるまで教え込むのはほんとに大変です。少し前の話ですけど、入ってきてからもうすぐ六ヶ月が経つというのに、一向にうなぎがうまく裂けなくて全くお手上げの子がいましてね。もうどうすればいいか、僕にも分からない。
ところがある朝、いつものように包丁を持って、「いいか、こうやるんだぞ」ってやってみせたら、パッとできるようになった。勘を覚えたんです。それには僕も驚いた。「おい、おまえ裂けんじゃねえか」って言ったら、嬉しそうな顔をしてね。それからはもう夢中になってやり始めて、ものにしちゃったんです。やっぱり人間っていうのは、頭がいい悪いに関係なく、何かしらいいものを持ってますよ。それを教えるほうの人間がどれだけ引っ張りだせるか、出せないか、そこなんですね。
とにかく教えるっていうのは闘いのようなもので、苦しくて、きついけど、何かの拍子にぐんと成長していく姿を見るのは嬉しいですね。何が嬉しいって、これがいま、一番嬉しいんじゃないかな。
私の感想
人としてこの世に生まれたのだから、誰でも仏性を持っていると思います。別の言葉で言うと、神仏は我々一人一人に何らかの役割を持たせて、この世に送り出したと思います。しかしながら、自分自身で仏性を花開かせることの出来る人もいますが、出来ない人もいます。自身の仏性に気づき、花を開かせるきっかけを作る、それが人の上に立つ人間の役目であり、そうありたいと思いました。
この記事へのコメントはありません。