5月26日から27日まで「上総の里山 仏像ツアー」に参加し、千葉県のお寺をめぐりました。その中で一番印象に残った山武市の宝聚寺のことを書きたいと思います。
お寺に到着し、バスを降り、境内にある収蔵庫の中に入ると、中央に釈迦如来坐像、向かって右側に地蔵菩薩坐像が祀られており、着座し、ご住職のお話を聞きました。
法衣垂下式釈迦如来坐像
釈迦如来坐像は法衣が台座から長く垂れる「法衣垂下式」と呼ばれる像で、宋の仏画を基に彫刻されたものである。このように宋の影響を強く受けた仏像は、西日本にはあまりなく、鎌倉地方でよく見られる。
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上記は知っており、鎌倉地方でのみ見られる理由として、京都は既に文化が確立していたが、鎌倉は新しい都市なので、宋の文化を積極的に取り入れたからだ等と言われています。
法衣垂下式像は鎌倉のある神奈川県に一番多く、次に多いのは千葉県で、特に山武市には11体もある。
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このことは知らず、山武市にそれほど多くの法衣垂下式像がある事実に驚きました。
法衣垂下式像は一般に法衣が台座から垂直に下がっているが、本像は法衣が末広がりに広がっており、そのような像は本像ぐらいではないか。何故、そのように造ったか。像は禅定印で瞑想をしているので、裾は広がらないはずだが、神通を発揮すると衣が動くと言われている。法華経の序章で瞑想をしながら神通を発揮している場面があり、これから法華経を説こうとしている姿を表したのではないか。
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とても良い解釈で強く印象に残りました。法華経の解説本は何度か読んだことがあるので、像を拝観しながら序章の場面を思い浮かべました。もちろん、上記の解釈が唯一の解釈ではなく、他にも色々な解釈ができると思います。それが仏像拝観の楽しさであり、様々な解釈を批判せず、その中から一番自分にしっくりくるものを自身の考えとして持つことが大切だと思います。
衣が赤くなっているように感じたので、そのことを伺うと、朱衣金体(しゅえこんたい)という、衣を朱色に彩色した像とのことです。
夢見地蔵尊
お寺では夢見地蔵と呼ばれているが、経典にはそのような仏は存在しない。実際には延命地蔵尊で、像は江戸時代の作である。夢見地蔵は夢に対して3つのご利益がある。
1つ目は「夢違い」である。悪夢を吉夢にする。2つ目は夢多き人に夢を叶える勇気を与える。3つ目は夢を失った人に夢を与える。夢があるから(その夢を実現するために)努力するのである。よって、三夢地蔵である。
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本像は如意輪観音のように右手を頬に当て考え事をしている(夢を見ている)ように感じるので夢見地蔵と呼ばれるようになったのかなと思いました。
話を聞く前に夢見地蔵を拝観した時、3ヶ所(胸、右膝、左膝)が黒くなっていることに気づきました。膝ですので、膝の悪い方が撫でで黒くなったと思いますが、3つの夢に関するご利益の話を聞いた後、黒くなっている箇所と夢がリンクするのではと思いました。つまり、右膝(右足)は台座を踏みつけているので、悪夢を踏みつけ吉夢に変えてくれる。左膝(左足)は踏み下げているので、夢を叶える為、前に一歩出ようとする勇気を与えてくれる。胸は夢を失った人の心に夢を再び呼び起こしてくれると解釈できるのではと思いました。
最後に
仏像を介して、ご住職と様々な話をするのは私の好きなお寺巡りスタイルですので、宝聚寺ではとても楽しいお寺巡りが出来、感謝です。
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